神社

平日が休みの日。朝から俺は神社にいた。

平日、朝10時の神社。誰もいない。鳩もいない。

 

厄年なんだからお祓い行ってこいや。と妻君に言われた。 

妻君のママ友はその旦那が厄年だったのに厄除をしなかったせいで病気になった。

旦那の厄災がうつった。らしい。

あんたの厄を私や子にうつされたら嫌だから。ほら行きなさいよ。

。。。まるで感染症のようだ。手を洗うだけじゃダメだろうか。

 

俺はこの類いの事はなんか笑ってしまってどっちでもいいのだが、

厄除に行ってシャンシャンと祈祷されて

家族の不安が消えるならそれでいい。特にすることも無い日だったので、

30分歩いて神社に行った。

 

受付のところで「どんな御用でしょうか?」と聞かれた。

40に見えると思われる男性が一人で安産祈願や七五三には来ない、

とは言わなかった。5,000円を払った。

 

15分くらいとても綺麗な誰もいない待合室で待ったのち、若い巫女さん的な

人がこちらへお越しくださいと言った。なんかコスプレ風俗店っぽいと朝から

思ってしまった。こんな精神状態の人が厄除けに行っていいのか。

その人についていき、祈祷を行うデカい広間へ移った。

神主さんが出てくると思ったら、その巫女さん的な人が

「本日はお越しくださいましてありがとうございます。今からご祈祷をおこないます」

と言った。え、あんたが神主かい!と心でツッコミをいれた。

神主さんはもう一人あとから来て計女性2名で、一人は四千頭身の都築に、

もう一人はDr.スランプアラレちゃんに似ていた。

 

なんとなくイメージで威厳のある大神主(顎髭がわっさり生えている)が出てくると

思っていた。祈祷されている最中、

俺より一回り以上年下の女子に、厄払いをしてもらっている。。。

これやっぱ厄除けプレイか。。。30分5,000円。。。

キャバクラよりちょっと高いか。。。

などとどうでもいいことを更に思った。

 

最後になんか土産みたいな紙袋を渡された。中にお札と絵馬と和菓子が入っていた。

お札を貰って、やっと祈祷っぽいわと思った。

絵馬は境内の奥に書く机があると言われ、その机に向かった。

 

机の前で油性マジックを握り考えた。さあ何て書くか。

括り付けられている絵馬を眺める。

〇〇大学に絶対合格しますように。彼氏が今年こそできますように。

元気な子が生まれますように。うんうん。ほかには?

CO2の少ない地球になりますように。。。CO2?

カラスになりたい。。。カラス?

 

まっさらな絵馬の前で、これは俺も試されているんじゃないか、

絵馬に見立てた大喜利なんじゃないかと、とてつもない脅迫観念が俺を襲った。

面白いことを書かないといけない。おいおいオイラ素人だぜ勘弁してよと俺は混乱を

極めた。ジンジャーエールを腹いっぱい飲めますように。神社だけに。。。

いや違うか。。。全然おもんないか。もっと面白いこと。とんちを。

とんちを俺に。。。一休さーん!

 

そこから先の記憶がない。

気がついたら俺は「家内安全」とだけ書かれた絵馬を、紐に括り付けていた。

もう11時近くになっていたが、相変わらず境内には俺だけだった。

すごく冷たい風が吹き、絵馬がガラガラと音を立てて揺れた。