仕切り
夕飯を持ち帰りの寿司にした時に、
巻物と握りの間とかに挟まっている「緑色の仕切り」を遊びに使いたいという子を
横目で見つつ、妻君が言った。
あとで洗ってあげるけどさ、ところで、これの名前知ってる?
俺と子はほぼ同時に言った。
緑のギザギザ。
こんなん緑のギザギザだろう。
正確に言うのなら、緑のギザギザの仕切り、だ。
バラン。
妻君が言った。
これは、バランです。
俺と子らは固まった。
これはギザギザだろう。。。実際、ギザギザだし。
どこがバランなんだ。何がバランなんだ。あ、アルデバランって何だっけ。
なんで妻君が知っているのかよくわからないが、
俺の世界にひとつまた名前がついた。子らの世界にも。
身近なものに名前がつく。とてもいいことだ。
食事も最後になった頃に、妻君が更に言った。
食パンの袋の口のところについてるプラスチックの留め具の名前、知ってる?
もちろん誰も知らなかった。
妻君は続けて言った。
あれは、バッグクロージャーです。
持ち帰り寿司を何となく食べたおかげで、俺たちは新しい名詞を2つも覚えた。
いい一日であった。
翌朝、工作をしたい子が、お父さん昨日の緑のギザギザどこ?と言った。