ファン

ちゃんと数えたら、家に11枚あった。

CDアルバムの数が。

 

くるりの。

 

ここ最近は聴かなくなってしまったが、

たぶん18歳くらいからずっと、心の傍らにくるりはいる。

めちゃくちゃ大ファンではないけど、ずっと鳴っている。鳴っていた。

自分にとってそういうバンド、くるり

 

ファンファンが抜けた。でも別に驚かない。

もう何回目だろう。森君、クリス、達身、吉田省念などなど。

みんないなくなった。

こんなに色々な人が出ては入るバンド、珍しい。

いったいくるりとは何なのか。

 

マグカップだ。気に入ったマグカップ

今日ずっと考えていて思った。

くるりの歌はいつも叙情的でつかみどころはなく、

だけど聞く俺のこころに少し触って、どこかへ消えていく。

俺はたぶん、そんなくるりという存在というか雰囲気というか、

そういう感じ自体がかなり好きで、くるりという容器に入れたものなら

たぶん好きなのだ。だから誰が入って抜けても関係ない。

くるりくるりだから。

 

つまり岸田繁なのかと言われると、ちょっと違う。

岸田繁自体はけっこうスカしているときもあって、彼自身に惹かれている

のではない。あくまで演奏しているくるりというバンドの音楽が、

好きだ。

 

好きな曲はと言われたらそれはそれであるが、

どこがと言われるとさっぱり答えられない。アルバムによって

けっこう違うことをやるし。でも、ずっとくるりが俺の中にはある。

 

 

 

青い空は遠くなっていく

あなたの言葉やぬくもりを

思い出したら夕凪が言葉も云わず暮れていく

僕は今日も変わりなく何かのために生きている

 

 

ひとつ、ささやかな夢があって、

いつか子が年頃になってもしも音楽が好きだったら、

妻君と子と一緒に、おそらく還暦に近いくるりを聴きに、ライヴにいきたい。

少し欠けたマグカップも、俺は嫌いじゃない。

街灯

朝はやく仕事にいくから、当然外はまだ暗いときが多い。

夜が明けるか明けないかくらいの。

そんな朝方、駅までの道で曇ったメガネに入ってくるぼやっとした光をみて、ふと思った。

街灯が家路を照らしている。

暗くても、街灯があるから、暗くない。怖くない。

斜め上を見ながら歩くと、駅までの道だけでも実にさまざまな形の街灯がある。

電気スタンドを大きくしたような形。

ガラス電球のような形。

うちの駅前はレトロスペクティブな六角形の

ガラス灯もあった。

誰かがデザインを考えて誰かが立てた。

誰かの家路のために。

最近は色々な街灯を見ながら歩くのもなかなか楽しい。

普段まったく気にしないが無かったら確実に困る。(星座の勉強にはなるかもしれない)

防犯にも一役買っているだろう。

いつのまにか点いて、いつのまにか消える。

街灯ごとに違うのか、全部せーのでオンオフするのか。何時に点くのか。冬と夏は同じなのか。誰がどこで切り替えているのか。

何もわからない。

そんなことを考える俺を、街灯は今日も家路を見守ってくれている。

きのこ帝国に「クロノスタシス」という美しく甘やかな歌がある。 曲もMVもとても良くて、街灯が歌詞にも画にも出てくる。大好きでたまに聴く。 明日も仕事だ。よろしく街灯。

ピカソ

なんか絵をみたくなって、ピカソを観に行った。

しかもピカソピカソでもセラミック作品。陶器。

ピカソは陶器もやっていたとか初めて知り、俄然興味が沸き

表参道に行った。家族で行った。

家族で陶器。最悪、誰か割るかもしれない、、、とか思いつつ。

 

かなりの至近距離で作品を鑑賞できた。

人の顔や牛や鳥をモチーフにしたものが結構あった。

子供のための鑑賞ワークブックのようなものもあり、

この壷はどんなことを考えているかな、みたいな事を書けるようになっている。

そんなもんで子らは面白くて立ち入り制限のロープきわきわまで近づき

作品をガン見するので、

親は、あー近い近い割る割る割る。近いって。ほら割れるから。近いって!

をかなりの回数言った。

 

途中で絵画作品もあって、レモンと茄子とあと何か(忘れた)

みたいな静物画があった。

俺はこれがめちゃくちゃ気に入って今かなり絵が欲しいのもあって、妻君に、

「こういうの、、、こんど買うかあ」とここは絶対賛同されると思いつぶやいたら、

「や、こういうのはまじで全然いらね。」と言われた。

結婚してえらい経つが、いまだ人の好みはわからない。というか移ろうのか。

かなり自信あったんだけど。趣味悠々

 

後半では南フランスらへんに移り住んだピカソの作品が展示されていた。

妻君はずっと作品をみつつ「やっぱ南欧だ」「どうりで南欧っぽいと思った」

南欧風の色づかいなんだなあ」とタカアンドトシばりに「南欧だ」を連発し

勝手にうんうんと納得していた。

俺は何が南欧風かよくわからなかったが、ピカソのセラミック作品は

とにかく南欧感がすごいらしい。

 

ピカソ60歳くらいが鳥を彫っている映像があった。

動いているバブロ・ピカソを初めてみたが、すごい眼差しだった。

迷いが感じられない、強い眼差しだった。

この眼がゲルニカを描いたんだと思った。

 

俺はピカソがとても好きになったので、

静物じゃないピカソの絵をいつか家に飾りたい。南欧風でもいい。

 

 

こじんまりとした展示場なので小一時間で見終わって、

茶でもすっか、となった。

表参道のそれっぽい喫茶店はそれっぽく混んでいて、

たまたま開いていた洒落たハンバーガー店で、俺はコーヒーと一緒に

ハンバーガー180円をおやつ代わりに頼んだ。

このハンバーガーが衝撃的なうまさだった。

初めてヒートテックを穿いたときのような衝撃。ぜんぜん違うじゃん、と。

とてもシンプルなハンバーガーだったが、パンは甘く柔らかく、

牛肉はよけいな味が一切せずただただ肉本来のうまみがした。

俺は今まで何を食っていたんだと思った。180円でどうしてこんな

ハンバーガーが出せるのかさっぱりわからなかったが、とにかくおいしかった。

うまい!と俺は8回くらい言った。コーヒーは普通だった。

 

ピカソで浮かれてしまったせいじゃないことを願って、今度もう一度、

あのハンバーガーを食べたい。

愚痴をこぼす

一晩経っても、てんで収まりがつかないので、書く。

 

昨日、ウチの父が喪主となる葬儀があった。

少ないながら、親戚や知人友人が参列に来た。

 

坊さんの読経が滞りなく終わり、まもなく出棺ですとなって最後の別れを

惜しむ段になったとき、一人の知人と思われるババアが急に祭壇の前に

カットインしてきた。そしてデジカメを出して祭壇と遺影をパシャっとやった。

で、さらに棺に近づき亡骸も撮った。

 

俺は唖然として、あ、あ、、、、としか言えなかった。

ババアは、いやー失礼しちゃって(てへ)という顔で悪気もなく

自分の席に戻った。

 

どういう神経なんだろう。

喪主にも誰にも断りもせず、撮りたいと思ったものを撮る。

自分が撮りたいものだから、メモリーにしたいから、誰かに見せたいから、

見て感想を言ってもらいたいから、撮る。遺影だって亡骸だって撮る。

決して撮られた側の気持ちは考慮されない。

 

なんなんだこの世界は。

そんな無神経さを助長するためにテクノロジーがあるのならば、

俺はそんなものいらない。

 

以上、愚痴であります。糞ババアめ次に会ったら

火ぃついた線香の束、鼻にブッ差してくれるわ。

 

なお父は超ド級の口ベタで、最後の喪主挨拶のとき、

本日は遠いところ、、、ありがとうございます。そういうわけで、、、あ〜、

今日はもう何も、、、言う事が、、、思い浮かびません。。。

と、ある意味正解な事を言った。

俺もまったく同じ気持ちだった。

神社

平日が休みの日。朝から俺は神社にいた。

平日、朝10時の神社。誰もいない。鳩もいない。

 

厄年なんだからお祓い行ってこいや。と妻君に言われた。 

妻君のママ友はその旦那が厄年だったのに厄除をしなかったせいで病気になった。

旦那の厄災がうつった。らしい。

あんたの厄を私や子にうつされたら嫌だから。ほら行きなさいよ。

。。。まるで感染症のようだ。手を洗うだけじゃダメだろうか。

 

俺はこの類いの事はなんか笑ってしまってどっちでもいいのだが、

厄除に行ってシャンシャンと祈祷されて

家族の不安が消えるならそれでいい。特にすることも無い日だったので、

30分歩いて神社に行った。

 

受付のところで「どんな御用でしょうか?」と聞かれた。

40に見えると思われる男性が一人で安産祈願や七五三には来ない、

とは言わなかった。5,000円を払った。

 

15分くらいとても綺麗な誰もいない待合室で待ったのち、若い巫女さん的な

人がこちらへお越しくださいと言った。なんかコスプレ風俗店っぽいと朝から

思ってしまった。こんな精神状態の人が厄除けに行っていいのか。

その人についていき、祈祷を行うデカい広間へ移った。

神主さんが出てくると思ったら、その巫女さん的な人が

「本日はお越しくださいましてありがとうございます。今からご祈祷をおこないます」

と言った。え、あんたが神主かい!と心でツッコミをいれた。

神主さんはもう一人あとから来て計女性2名で、一人は四千頭身の都築に、

もう一人はDr.スランプアラレちゃんに似ていた。

 

なんとなくイメージで威厳のある大神主(顎髭がわっさり生えている)が出てくると

思っていた。祈祷されている最中、

俺より一回り以上年下の女子に、厄払いをしてもらっている。。。

これやっぱ厄除けプレイか。。。30分5,000円。。。

キャバクラよりちょっと高いか。。。

などとどうでもいいことを更に思った。

 

最後になんか土産みたいな紙袋を渡された。中にお札と絵馬と和菓子が入っていた。

お札を貰って、やっと祈祷っぽいわと思った。

絵馬は境内の奥に書く机があると言われ、その机に向かった。

 

机の前で油性マジックを握り考えた。さあ何て書くか。

括り付けられている絵馬を眺める。

〇〇大学に絶対合格しますように。彼氏が今年こそできますように。

元気な子が生まれますように。うんうん。ほかには?

CO2の少ない地球になりますように。。。CO2?

カラスになりたい。。。カラス?

 

まっさらな絵馬の前で、これは俺も試されているんじゃないか、

絵馬に見立てた大喜利なんじゃないかと、とてつもない脅迫観念が俺を襲った。

面白いことを書かないといけない。おいおいオイラ素人だぜ勘弁してよと俺は混乱を

極めた。ジンジャーエールを腹いっぱい飲めますように。神社だけに。。。

いや違うか。。。全然おもんないか。もっと面白いこと。とんちを。

とんちを俺に。。。一休さーん!

 

そこから先の記憶がない。

気がついたら俺は「家内安全」とだけ書かれた絵馬を、紐に括り付けていた。

もう11時近くになっていたが、相変わらず境内には俺だけだった。

すごく冷たい風が吹き、絵馬がガラガラと音を立てて揺れた。

残業中に

終業時刻を過ぎて残業していた俺のところに、

Uさんがフラっとやってきた。あんな、ちょっと聞いてもらっていい?

Uさんは関西人だ。

愚痴だろう。Uさんは直接仕事の利害関係がない俺にたまに愚痴を

言いにくる。俺も嫌いではないので、聞く。

 

Kさんおるやん、俺んとこの。

こないだ趣味のロードバイク乗ってケガして、1ヶ月まるまる休んだやん。

穴埋めめっちゃ大変だったわ〜。

そんで治って出て来たあとに、Kさんウチのチームにお菓子持ってきてん。

1人に一粒二粒くらいのちっさいチョコレートや。

それでな、そのときに言ったんや。。。

 

会社規定で見舞金が出たんで、それでこのチョコレート買いました。

これでどうかチャラってことで。。。へへへ。

やって。どう思う?

 

憤りを通り越した、半笑いでUさんは言った。

お詫びにしたってそれ会社のカネやん。しかもチョコレートでチャラって。

俺たちどんだけ苦労したと思う?あいつ頭おかしない?

Uさんは止まらなかった。

 

俺は言った。

まあ、言わなくていいことまで言っちゃってますね。。。

一言、詫びの言葉添えて渡すだけでいいのに。。。

 

Uさんは続けた。

やろ?あいつたぶんあれやねん。病気やねん。ADHDやねん。

相手の気持ちがわからない。すぐ寝る。よくミスる。教えてもまたミスる。

絶対そうや。

 

Uさんは興奮して言うべきでないことまで言っていた。

俺は言った。病気かはわからないですけど。。。

まあ、これ言ったら相手がどう思うかは、もう少し考えてもらった方が

いいですよね。

 

Uさんは更にまくしたてた。

しかも昨日、もうあんだけ休んだのに、

普通に残ってたリフレッシュ休暇(有給と別に、一定の年数ごとに貰える休暇)

使ったやん。

 

あー、あれは「リフレッシュいま取るんかーい」と俺もさすがに思いましたけど、

まあ、権利ではありますからね。。と俺が言うと、

義務を果たさんやつに権利なんかあらへん。とUさんは曲げなかった。

気持ちはよくわかった。

この辺は本当に色々な考え方の人がいて、俺なんかはやることやっていないのに

権利だけ主張するのは性根としてできない。なんか気持ち悪い。

義務の再考と権利の徹底が現代の流れのような気がするけど、責任感の

あるやつが、真面目が馬鹿をみるような世界がほんとうにいいのか。

ちゃんとお天道様は見てますよ、みたいな昭和なニュアンスなことをUさんに

返す事しか俺はできなかった。

 

隣の席で聞いていたうんうんと聞いていた年配のWさんが、ぼそっと言った。

ああいう人はさ、ろくな死に方しないよ。

 

コロナでなければ、このままUさんWさんとアホみたいに

飲みにいく感じの日だった。

 

いまKさんは陰で「リフレッシュさん」と呼ばれている。

スマイル

1か月くらい前だと思うけど、Mステに出ている森七菜をみた。
スマイルを歌っていた。ホフディランの。
初々しさと天真爛漫さを圧倒的に見せつけられた。
と同時に、なんとも言えない違和感も感じ、気づけば曲中ずっと俺は口が開いていた。
なんだろうこの感じは。
 
歌詞を思い返してみた。
 
 
いつでもスマイルしようね
とんでもないことがおきてもさあ
かわいくスマイルしててね
なんでもない顔してでかけりゃいいのさ
 
ねぇ 笑ってくれよ 
キミは悪くないよ
ねぇ 笑ってくれよ 
さっきまでの調子で yeah
 
 
。。。まずこれが原因なんだと思った。
元々はインディーズの弱そうな見た目のミュージシャン(男)が哀愁たっぷりに
歌うから成立する歌詞だ。なんというか、今のご時世に全然合っていない。
女よ、いつもニコニコしていろと。何も考えるな俺のためにニコニコしていろと。
 
アウトだ。一発退場だ。
 
しかも森七菜自身がそれを歌っている。または、歌わされている。
これ、どういう気持ちで歌っているんだろう。アホなのか。
もし妻君にいい曲だから歌ってくれとお願いしたら、調子にのんなバカと
複眼六角と百足蛇腹(蟲の呼吸)で俺はメッタ刺しにされているだろう。
森七菜19歳。何も考えていない、いい曲じゃんとか言われたらそれまでだが。
 
もうちょっと歌詞をみてみる。
 
 
いつでもスマイルしててね
深刻ぶった女はキレイじゃないから
すぐスマイルするべきだ
子供じゃないならね
 
 
うーん、大人の事情は考えろと。やっぱ俺のために笑えと。
どうしてこんな男目線の曲を。
 
Mステの森七菜の歌は上手だったけど、
なんというかクラスで1番歌のうまい子が元気に歌っているという感じで、
うま過ぎず、決してヘタではなく、ナチュラルで、つまりもう完璧だった。
 
そうだ。ナチュラル過ぎた感じがあった。
ナチュラル過ぎ、、、適度な感じを出し過ぎ
つまり演じていたのかもしれない。役者として。見る者がどう感じるかを
計算して。
 
スマイルの歌詞の最後はこうだ
 
かわいくスマイルしててね
人間なんかそれほどキレイじゃないから
すぐスマイルするべきだ
子供じゃないならね
 
スマイルという歌はこのラストがある事で全体の印象が違うのだけど。
19歳の森七菜。
あたしもう子供じゃないからどんな事だってやり切りますよ。スマイルで。
そういう決意を含んだ、業を自ら背負った歌なのかもしれない。
Mステは女優・森七菜が魅せたナチュラルの極みだったのかもしれない。そりゃ俺の口も開くわ。。。
 
 
なんも考えてない歌。
業を背負った歌。
 
どっちにしても、このスマイルを歌っちゃうのハンパねえなー、
と俺は森七菜に思ったのであった。とんでもない女優、なのかも。今後に注目。
 
 
ホフディランは「極楽はどこだ」という歌がとても好きだ。