インターホン

昨晩、もう夕飯も終わった20時半過ぎにインターホンが鳴った。

誰だろうこんな時間にと思ったら、

近所に住むF井さんちの奥さんだった。

 

あの、、、、これ、、、もし良かったら皆さんで、、、と

F井さんの奥さんはちょっと恥ずかしそうに、何か入った紙袋を手渡してくれた。

 

見ると紙袋の中には、「わさビーフ」が2袋入っていた。

 

夕食後 F井家からの わさビーフ

ピンとこないが 鼻にツンとくる

 

くだらない短歌を思いついている場合ではない。

ありがとうございます。でも急にどうしたんですか?

 

F井さんは言った。

実はうちにメーカーからケースで大量に送られてきちゃって。

だからおすそ分けなんです。。。

 

(や、そこじゃなくて、なんでわさビーフ?)

 

俺は自分の持てる語彙力会話力コミュニケーション力を総動員し、

相手に失礼にならないように、核心に迫った。

ああ~僕わさビーフ大好きなんですよ。ビールにも合うし。久々だしうれしいな~。

あっ、でもどうしてそんなにたくさんあるんですか?

そういえば、僕もこないだ会社絡みで食べられるけどパッケージ不良のシリアル大量に持って帰ってきて、消費するのまあ 大変で、、、 

 

すると、F井さんはめちゃくちゃ恥ずかしそうに答えた。

いえ、実は、、、わさビーフの牛の新キャラクターの名前募集があって、、、

応募したら、、、私の出した案にほぼ近い名前に決定されたみたいで、、、

それで、、、賞品ていうか、、、贈られてきたんです。たくさん。

 

F井さんの奥さんは顔から火がもう出ていた。わさビーフ一気に3袋いった顔だった。

でも、まんざらでもない顔でもあった。

説明する気恥ずかしさと、採用された誇らしさが同居していた。

 

そりゃ言いたいだろう。新わさビーフの牛の名前はアタシが原案を考えたんだよ。

旦那さんや中学生の息子に言うだけじゃ足りないだろう。

ご近所にも言いたいだろう。わかる超わかる。これは言いたい。

保護者会で言いたい。ツイッターでも言いたい。

何なら夕方5時の地域ニュースで取り上げて欲しい。

ご紹介します。わさビーフの牛の名付け親・F井さんです!

 

これからスーパーでわさビーフを見かけるたびに優越感にひたるF井さんの奥さんに

思いを馳せた。

 

 

すごいですね。良かったですね。

俺は心の底から言った。

 

お宅と、〇〇さんだけにしか渡さないんで、ナイショで。

オッケーです。おやすみなさい。

わかる。話の通じる人にちゃんと伝えたいんだろう。アタシがやったんだよって。

全部出し切って普通の顔に戻ったF井さんは、帰っていった。

 

 

すぐHPを調べたら、牛の名前は「わさぎゅ~」であった。まあ、普通かな。

と思いきや。

説明には「牛のかたちをしたわさび好きの妖精」とあった。

わさび好きの妖精・・・妖精!?

おいちょっと待ってF井さ~ん!もうちょっとその設定、聞かせてくれよ!

 

わさビーフご賞味あれ。