銀の

業務もピークになる15時ごろ、小腹が減ってお菓子をつまんでいた俺は

ふいに叫んでしまった。

ぐおー!出た!!やばい!!

うおーマジか40年生きてて初めて出た!!!出た!!

 

叫ばずにはいられなかった。

俺のうしろのおばちゃんN山さんが聞いてくれた。何、どうしたの?

 

俺は目をキラキラさせてN山さん言った。というか

事務所の全員に聞こえる声で言った。

 

出たんです。銀のエンゼル。わーマジで初めて。

いままで通算何百箱のチョコボールを食べただろう。全部外れ。

エンゼルは幻だとずっと思っていた。クエックエッじゃねえよと思っていた。

 

あー、嬉しい。ほんと嬉しい。金じゃないけど、これは嬉しいわ〜。

どうしようもない僕に天使が降りてきた、なんつって。

 

N山さんは、あら〜良かったじゃない。おめでとう。と言ってくれた。

事務所の全員が忙しいにも関わらず、

それは良かったね、わかるわかる、私もまだ当たったことないし〜などと言いながら

こちらを向いて拍手をしてくれた。

優しい。ほんとはクソ忙しいのにうるせえとも言わず、エンゼルに乗っかってくれる

おじさんおばさん達に涙が出た。

 

俺は、嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが混ざり、溢れる拍手に

「・・・うす。」と頭を下げた。

 

ああ、俺はいま生きている。

まさに頭の上を天使たちが飛んでいる状態。

そう思って浸っていたとき、E戸さんが俺のまえまでツカツカ歩いてきた。

 

「ほら。これあげるわ。」

と言って、紙の切れ端を俺にくれた。ウラ返すと、

E戸さんが先日当てたらしい、銀のエンゼルだった。

あたし何回か当ててるから、どうぞどうぞ。あと3枚で缶詰もらえるよ。

 

たった数分で、俺の銀のエンゼルは1枚から2枚に増えた。

 

おいおいおい!

そういう事じゃないんだよ!!E戸さんよ!

俺は自力で当てたこの1枚の喜びを噛み締めてんだよ。

夜、家族にも絶対言うくらいの事なんだよ。

別に2枚目がすぐに欲しいとか、缶詰が欲しいとかじゃないんだよ。

この多幸感を、そういう安易な優しさで薄めてくんじゃないよ。

さっきの皆さんの感じでいいんだよ。

それじゃあ銀のデビルなんだよ。。。

 

でも俺は大人なので、

ありがとうございます。やった〜明日も明後日も買って、

すぐに缶詰ゲットしちゃおうかな〜。へっへっ。

と言って、残りのチョコボールを一気に全部、口にいれた。