拭く方法

ちょっと手伝ってあげて。

と洗い物をしている妻君に言われ、トイレのドアを開けた。

子のおしりを拭くために。

 

まだ自分できれいに拭けないからなのだが、

子と、こうやってさ、あ、やっぱこっち側から、とか

うだうだやっているウチに、妻君から何してんのそれ?はい全然違う交代。

とリングサイドからタオル投入。ならぬトイレットペーパー投入となった。

 

どうやら俺は世間と、少なくともウチの家族と、おしりの拭き方が

違う、らしい。

 

俺は立って拭く。

立って、右手で、太ももの外側からいく。

それ以外の方法も試したことがあるが、違和感があり過ぎてやめた。

何十年もこのスタイルで生きている。

 

たぶん小学生低学年とか、物心がつくころには各自が確立するのだろうが

なにせ密室での個人的作業だから、誰かに教えてもらったり他人を真似たりがない。

 

シャンプーや歯磨きとは違い、他者との比較ができない。

そんなトイレットペーパーのCMはない。教科書にも載っていない。

情報を得られる場面があるだろうかといろいろ考えたが、

たとえ排泄趣味な動画でも、おしりを「拭く」シーンに焦点が

当てられることはさすがにないのではないだろうか。

極めてガラパゴス的な行為なのだ。

多くの人は、座ったまま、内側から、拭くの。。。?

できん!

 

しかも俺は拭くときの音も違う、らしい。

たまに妻君がトイレ前を通過すると、いつも引くくらいの

ものすごい音がする、そうだ。

これが自分の普通なのでアレなのだが、確かに自分の机にがっつり書かれた落書きを

消しゴムで全力で消す、くらいの摩擦力はあるように思う。

おしりへのやさしさ?必要ねえよ。ちんたらしてたら日が暮れちまうよ。

物理の教科書でも開いて摩擦抵抗勉強していこいや!!!

 

立って右手で太ももの外側から消しゴムで消すように拭くんだよ!俺は!

 

 

熱くなってしまった。

 

 

誰にも迷惑をかけてもいないし、

俺はこのスタイルで死ぬまでいくだろう。

そしてきっと世の中には、俺も引くくらいの、とんでもないやり方もあるのだろう。

それしかできない、奇妙で不器用な人たちに、思いを馳せる。

 

知りたいような、知りたくないような。

Siriに聞こうかしら。尻だけに。