杖で踏む

家の前は私道になっていて、うちの子と近所の子、それに大人らが

小一時間あそぶ貴重な場所になっている。公園にも行けないもんで。

 

暑かった昨日は水風船や水鉄砲をしていたが、

遊んで水浸しになったアスファルトにきれいな黒アゲハがとまった。

子らはワーワーと珍しそうに眺めていたが、そこに居合わせたウチの

隣のM山さん(85歳位のババア)が、

「こういうのが卵を産んで、大きくなったイモムシが植木たべちゃうのよ。

殺してあげようね。」

と普通に言った。

そして、杖で、ざす!ざす!とアゲハを叩き潰そうとした。

ざす!ざす!

黒アゲハには、なかなか当たらない。

「いやいや婆ちゃんそれダメだから。子供たち、観察してるから。」

凍りつく子供らの表情。焦る保護者たち。ざす!ざす!

「おほほほダメよ。イモムシは植木食べるから、お婆ちゃんが殺して

あげるのよ。」

ざす!ざす!

ついにうちの子は泣き始めた。とまらないM山のババア。

ババアまじでやめろ。お前の家の植木などどうでもいい。

なんでこんなことをする?

 

あ、これがほんとのバタフライ・エフェクト

ババアは演繹法とは何かを子らに示唆している?

 

んなわけない。

ていうかアゲハも水飲んだらさっさとどっか行けよ。

 

俺は声に出して世界に言った。「カオス!ケィオス!」

ババアには全く聞こえていない。

ざす!ざす!

 

最後は保護者らがM山ババアをスクリーンアウトして凌いだ。

杖でババアをしばきたい気持ちをなんとか抑えて。

翌朝、妻君と、アゲハ潰してたらあれは子は蝶がトラウマになるやつ

だよな。。。と話した。

 

燃えるごみを出しにいくと、ごみ置き場の前にM山ババアがいて

「今日もいい天気ねえ」と笑顔で言った。